和太鼓乱打舞

特集1 現代サークルの力

「一人一人がサークルを楽しくする」

「月刊社会教育6月号」より転載

乱打舞誕生

1997年12月の町田市広報に興味深い講座の案内を見つけた。記事には、「公民館青年講座 和太鼓会費無料」とあった。「無料」という言葉と、町田公民館という近場で行われるという点に惹かれて早速応募することにした。

いまどき和太鼓の講座などに人が集まるものかと思いながら第1回目の講座に向かったが、いざ蓋を開けてみると、当初の定員30人を上回る40人以上の人たちが集まっていた。青年講座ということだったが、受講生の中には年配の人も多く、なにより全体の8割以上が女性だったことに驚いた。仲の良いグループで参加している人や公民館の職員と面識のある人もいたが、大半は個人で参加しており、緊張気味の人が多いように思えた。

やがて「おはようございます」という声とともに中年の男性と若い女性が会場に入ってきた。はじめは公民館の職員かと思ったが、そのうち「鼓友会」という和太鼓グループからきたこの講座の先生であることがわかった。

和太鼓の先生というと、なぜか気合の入ったおじいさんを連想してしまうが、二人とも想像していたより若い先生で、一人は女性だったことに再び驚いた。それから参加者の自己紹介が始まったが、会社員から主婦、学生など、10代から40代まで、職業も年齢層も実にさまざまな人たちが集まっていることがわかった。

講座の内容は、週1回、2ヶ月にわたって練習をし、最後に練習の成果を一般の人たちの前で発表するというものだった。文で書くのは簡単だが、内容は想像していた以上にハードで、2ヶ月後の発表会のことなど考える余裕もないほど早いペースでの練習が続いた。そして真新しいバチにも慣れないうちに、あっという間に発表会当日となってしまった。しかしたった2ヶ月の練習だったにもかかわらず、発表会ではそれぞれが練習の成果を存分に発揮して無事終了し、この講座自体は当初のスケジュールどおり発表会をもってすべて終了した。

その2週間後、発表会のビデオ鑑賞会が開かれた。その席で、誰からともなく「もっと続けたい」という要望が広がり、それなら有志のメンバーで新しく和太鼓のサークルを発足させようという話になったのである。その後サークルの運営や練習場所、日程などを話し合い、指導は青年講座でお世話になった小川りつ先生に引き続きお願いすることになった。サークル名はメンバーの年齢、職業などばらばらな点が多いため、「ランダム」という言葉があがり、漢字をあてて「乱打舞」に決定した。
こうしてメンバー十数名は指導に小川りつ先生を迎え、和太鼓サークル「乱打舞」として新しいスタートを切ったのである。

乱打舞はこう動いている

練習風景和太鼓サークル「乱打舞」の活動内容は、基本的に月2回の練習を町田公民館や市内の公共施設を利用して行い、その成果を年に1度の公民館祭りやその他の出演依頼先などで発表するのである。

練習の日程は会社勤めの人が多いこともあり、毎月2回、週末の夜に2時間だけ行なっている。月2回の練習で物足りない人や練習に参加できなかった人のために、平日に自主練習の場も設けている。

運営はなかなかに大変で、この練習会場を予約するのも、公共施設の競争率が高いため、常に予定通りに押さえることはむずかしい。私たちのサークルは、町田公民館の和太鼓を使わせてもらっているのだが、メンバーの数に比べ太鼓の数が足りないので、自分たちでも太鼓を用意し、普段は職員の方のご好意で公民館に保管してもらっている。しかし公民館を練習場所として利用するときはいいのだが、その他の公共施設を利用する際には、車の手配や運搬を手伝ってくれる人を集めるのに結構手間がかかるのである

会費は、公共施設が無料ということもあり、安めの月々3,000円。その中から先生への授業料を支払い、残りは発表会の際に借りる太鼓のレンタル料や新しい太鼓を購入するための積立金としている。
このような活動をするにあたってのサークルの役職は、練習日程を決める代表者と、会計の2名だけである。これはサークルを運営していく上で比較的単純な構成だと思われるが、サークル運営を複雑にしないことは結果的に個々の負担を軽くすることにつながり、ひいては私たちがサークル活動をするにあたって大事なことだと考える「メンバー全員が楽しむ」というコンセプトにつながると考えているので、あえてシンプルな構成にしている。

ほかにも会費の額を上げて太鼓をレンタルしたり、新しい太鼓を購入したり、練習日を増やそうという意見も出ているが、これらのことを始めると活動が活発になるのと引き換えにサークルの運営に負担がかかり、役職への負担を増やさないことを含め先に述べた私たちのコンセプトに反することにもなるのでなるべく我慢するようにしている。

このように和太鼓サークル乱打舞は、趣味の域を出ることはできないが、その代わりに活動しやすい運営方法を採りながら楽しく活動しているのである。

練習風景

練習風景ドンドコドコドコ・・・」今日も太鼓の音が町田公民館地下のホールに響き渡る。私たちの憩いの場、乱打舞の練習風景を紹介したい。

19時20分:
続々とメンバーが集まり始め、ホールに常設してある椅子を片付け始める。着替え終えた人から太鼓を運び出し、セッティングをしていく。

19時30分:
りつ先生の「はーい、広がってー」の声とともに輪をつくり、入念な準備体操をしていく。りつ先生は和太鼓のほかにダンス教室も主宰しているので柔軟体操には滅法うるさい。毎回変わるストレッチの型に、みんなしかめっ面で四苦八苦しているが、体がほぐれ暖まったころには顔もほぐれている。

19時50分:
基礎練習開始。打つのは単調なリズムの繰り返しであるが、これをあなどっていては上達は望めない。

20時10分:
練習風景毎回りつ先生が新しいリズムを持ってくるのでみんな必死になって憶えようとする。譜面を書く人、頭に叩き込もうとする人、なかには憶える気がなく他人まかせな人などもおり、人それぞれでまったく個性的である。

21時00分:
発表会に向けての曲や、これまで演奏した課題曲などをみんなで練習する。和やかな雰囲気のなかでも練習中はみんな真剣で休憩をとるひまはない。

21時30分:
練習終了。練習に夢中で長引くこともしばしば。興奮冷めやらぬまま22時退館を目指して会場の片付けをする。この間に会計役が甲高い声で会費を徴収し、先生に授業料をお支払いする

22時00分:
代表の誘いに乗り、時間に余裕のある人は、町田の飲み屋街に消えてゆく。

サークル活動をする訳

練習風景練習をはじめこれだけ多くの活動を継続するには、やはりそれなりの努力が必要になる。乱打舞の活動を始めて2年ほど経つが、順調に活動ができているのは活動を企画している中心メンバーの努力の賜物である。公民館の予約に始まり、太鼓の運搬、事務連絡など、面倒くさいがするべきことはたくさんある。たとえば公民館をとるにしても仕事の都合をつけて朝の8時30分に公民館に電話をかけまくって場所を押さえるのである。それでも中心メンバーをはじめ、私たちが活動を続けているのはひとえに「楽しい」からである。

ある人は和太鼓を人前で上手に叩きたいと思ってサークルに来る。面倒な器材運びや厳しい練習もあるが、人前で納得のいく演奏ができた時や全員の演奏がばっちり決まった時などは日常の何事にも代えられない喜びや楽しさがある。

ある人はストレス発散のためにサークルに来る。会社を終えて食事もとらずに来る。誰よりも早く来て、準備をしてぶっ叩く。ドーンと腹に響いたら、嫌なことなど全て吹っ飛んでしまう。
またある人は集団活動などが好きで友人をたくさん作りたいと思ってやってくる。会場予約やメンバー全員への電話連絡など苦ではない。みんなと話をするだけで喜び、楽しそうに練習している顔を見て幸せな気分になれる。

練習風景乱打舞にやってくるメンバーはみんな「楽しんでいる」のである。人それぞれ楽しいと思える瞬間や度合いは違うにせよ、間違いなく楽しんでいる。さらに楽しむことを極めている人は、他のメンバーの楽しみ方を盗み、わがものとし、さらにサークルを楽しくしてしまえるのである。たとえば乱打舞では遊びのイベントの企画を出してくるのは一定の人間に限らない。普段の会話の中からひとつの話が盛り上がり、企画として自然にもち上がってくるのである。

そう、これからは「サークルは楽しい」だけではなく、「自分たちでサークルを楽しくする」ということを考えていかねばならない。「サークルは気軽で楽しく」という乱打舞のポリシーは、一人一人の「楽しくしたい」という思いと行動の現われである。

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